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糖化ストレスと酸化ストレス

​ グルコースやフルクトースなどの還元糖は、生命活動において必要不可欠な栄養素です。その一方で、過剰な糖は
タンパク質と非酵素的に反応する糖化反応を介し、様々な終末糖化産物(Advanced Glycation End Products, AGEs)を産生します。糖化反応の初期には酸化反応も関与しています。
 通常、生体には生じたAGEsを分解するための酵素が存在していますが、主に加齢や疾病によってこれらの活性は低下することが報告されており、結果としてAGEsの生体内への蓄積が亢進します。生体に蓄積したAGEsはタンパク質の機能不全や炎症を引き起こし、生体に様々なダメージを与えます。このようなAGEsが生体に与える悪影響を総称して『糖化ストレス』と呼んでいます。また、酸化反応も同様に『酸化ストレス』という生体へのダメージを惹き起こします。
『糖化ストレス』『酸化ストレス』は、糖尿病関連疾患、骨関節症、アルツハイマー病、がんなど様々な疾病の危険因子として注目されています。
 ​これらのことを基に、私たちは以下のような研究を行っています。

1. 植物中の機能性成分の探索

 植物に含まれる化合物を総称してファイトケミカル(phytochemical)といい、その中には植物が生きていくために自らを有害なものから守る目的を持つものが多くあります。例えば健康効果について報告されている”ポリフェノール”などは、紫外線から身を守る

役割を果たしているとされています。糖化ストレスについても、AGEs産生抑制作用を有する食物の摂取がAGEsの蓄積に端を発する疾病の予防に効果的である、という研究結果があり、当研究室でも様々な植物のAGEs産生抑制作用について研究してきました。

私たちは近年、同じ植物であっても品種が異なるとAGEs産生抑制作用の強弱が異なること、栽培水により一部の品種に機能の亢進が認められたことを報告しました。このことは、同じ植物であっても品種や栽培法でAGEs産生抑制作用成分の種類や量に変化が生じている可能性を示唆しています。現在は植物中に含まれるAGEs産生抑制作用成分の同定や、品種・栽培法の違いがどのように機能性成分の量の変化に関与しているのかなどに興味を持ち、研究を進めています。

研究例:

  イチゴの品種による機能性成分の差異

  特殊陶片処理水栽培による食品機能の亢進
 

2. 糖化ストレスによる細胞機能障害メカニズムの解明

 当研究室では様々な培養細胞を用い、AGEsが細胞の機能障害に関わるメカニズムについて研究しています。このメカニズムを明らかにすることで、AGEsによる疾病の発症にどのように対処すればよいのか、という予防につながる知見を得ることを目指しています。また、「1.」で研究している植物中の機能成分が細胞障害に対して有効に働くか、どの様な作用機序で効果を発揮するのか、といった研究も併せて行っています。

研究例:
  マウス破骨細胞分化誘導モデルにおける、糖化ストレスの影響
  ラット膵臓β細胞由来細胞における糖化ストレスの影響

 

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